新幹線に初めて乗ったのは、中学生の時でした。それまでの僕は、家族旅行といってもほとんどが車で行ける範囲しか出かけたことがなかったのです。幼稚園に入園して以降、夏休みに海へ行く時も冬休みにスキーに行く時も、いつも父の運転する車での移動でした。小学校の修学旅行は大型バスでしたし、遠い親戚もない我が家で新幹線に乗るチャンスはなかったのです。新幹線と言えば、絵本で知り、テレビで見て、抱えるくらいの大きなおもちゃを買ってもらった記憶程度だったのです。
新幹線に乗れるということが、何だかとても嬉しかったのを覚えています。実は、修学旅行の始まりは、学校から羽田まで大型バスに乗って行き、羽田から飛行機で広島へ向かうというものでした。普通は飛行機の方がインパクトは大きいと思いますが、実を言うと、僕には飛行機体験があったんです。小学4年生の時に「体験王国」のような合宿に参加したのですが、場所が北海道だったからです。たった一人で飛行機に乗って出かけたので、その時のドキドキは相当なものでした。
新幹線に乗るという初体験は、広島、安芸の宮島、京都と廻っての帰路だったのに、最後のお楽しみみたいに僕をワクワクさせてくれました。本当は桜が咲いているはずだった京都も、この年はとても早く咲いてしまったとかで、散ってしまった後でした。先生たちは残念そうでしたが、僕たちはその価値が分からなかったから、何とも感じなかったくらいです。いくつかのお寺やお城を見て歩いた時、今度ひとり旅でゆっくり来ることにしよう・・・などと考えていたくらいです。
新幹線に乗った時、お決まりの座席指定があったけれど、時々入れ替わったりしてワイワイ楽しく過ごせました。僕たちの車両は、一般の人たちと混合にならなかったおかげで、あまり迷惑をかけないで済んだのかも知れません。窓から見える景色は、いつもの電車から見えるものとは違っていたし、頻繁に止まって乗ったり降りたりもないし、新幹線は快適です。
新幹線に乗って一番驚いたのは、新幹線と新幹線がすれ違う瞬間でした。たぶん数秒のことだったと思いますが、一瞬の例えようのない音と緊張感です。仲間とトランプをしていたのですが、その瞬間みんなが止まってしまいました。ゆったり座れて外の景色が見られて、ものすごいスピードで東京駅に着いてしまった新幹線。もう少し大きくなったら、一人でゆっくり味わいたいと思った修学旅行でした。